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日本は早期警戒衛星を保有し、発射基地を攻撃できる巡航ミサイル装備せよ 対北防衛システム構築急務  拓殖大学総長・森本敏

 下記は、2017.3.13 付の【正論】です。

                        記

≪狙いは金正恩体制の生き残りか≫

 北朝鮮が2月12日に続いて3月6日、日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。昨年1月から10月までに核実験を2回、弾道ミサイル発射を23回実施したあと、約4カ月中断していた。トランプ候補(当時)が米大統領選の最中に「金正恩は現実に核・ミサイルを保有しているため米国もいい加減な態度はとれない。万が一、金正恩が訪米するなら受け入れる」と言っていたことに期待して、挑発を控えたとも思える。

 しかし、金正恩氏は今年1月の新年の辞で、大陸間弾道ミサイルICBM)の発射準備が最終段階にあることを指摘した。さらにミサイル発射と並行して、2月13日には、マレーシアで金正男氏が殺害される事件が発生した。

 これら一連の事案の背景には、金正恩体制の存続と生き残りという問題が指摘できる。核・弾道ミサイル発射は(在日米軍を含む)米国を攻撃できる能力を示威することによって抑止機能を強化し、できれば米国を対話の場に引き出そうとしたものであろう。

 金正恩氏にしてみれば、3月から米韓合同演習が始まり、その機会に米韓合同軍が北朝鮮に侵入してくるかもしれないという恐怖があるに違いない。

 またトランプ政権が対北朝鮮政策の見直しを行い、北朝鮮への先制攻撃やサイバー攻撃、中国への圧力強化、韓国への戦術核再配備などを検討しているという報道を知って、北朝鮮が先制攻撃や報復攻撃の能力を有していることを示しておく必要があると考えたのかもしれない。

 一方、昨秋ころから米国の脱北者団体が亡命政権をつくり、金正男氏もそのリーダーの有力候補という噂が伝わった。未然にその可能性を断ち切っておくことは、金正恩体制存続のためでもあった。

 そういう論理を重ねると、今回の一連の事案がこの時期に実行された動機は容認できないが、うなずけるものがある。孤独な独裁者が持つ恐怖感はわれわれでは分からない面があるかもしれない。

≪脅威は新たな段階に入った≫

 6回目の核実験がいつ実施されてもおかしくないが、核弾頭の軽量・小型化が進み弾道ミサイルに搭載できる日は近いであろう。3月6日の弾道ミサイル発射を見てわかるように、(1)いかなる時でも(2)いかなる場所からでも(3)多数の弾道ミサイルを(4)同時に、同一目標に対し(5)より高い精度で着弾できる能力−が向上しつつあることがわかる。

 移動式発射システムから複数の弾道ミサイルを同時に、同じ目標に発射できることにより、目標となる側は、予告なしに各種のミサイルが複数飛翔(ひしょう)してくるといったリスクへの対応を迫られる。

 今回の弾道ミサイルは在日米軍を目標とした訓練といわれ、実際には日本が管轄権を有する排他的経済水域EEZ)の中に着弾した。これが3回目である。船舶にあたるかもしれず、明らかに日本への脅威が高まっている。弾道ミサイルの弾頭部分に核兵器やVXが搭載されると、その脅威レベルは、さらに重大かつ深刻になる。

 そこで、今後の対応を考えてみたい。第1は日本の弾道ミサイル防衛システムである。

 現在、中間段階はイージスシステム搭載艦、終末段階はパトリオットPACシステムにより対処している。しかし、同時に多数のミサイルが同一目標に向けて発射された場合、現在のシステムで有効に対応できるかは不明である。評価分析を急ぎ、改善の必要があれば、ミサイル防衛システムのベストミックスを配備すべきである。

 また、在日米軍ミサイル防衛システムや、在韓米軍配備の高高度防衛ミサイル(THAAD)を含め、日米韓による北東アジア・ミサイル防衛システムを構築し、一貫した運用統制と情報管理の連携を図るべきだ。

≪制裁のすり抜けを許すな≫

 第2は、日本として北朝鮮の弾道ミサイル発射を早期に探知し、これを破壊する手段を保有することだ。そのため、現在は米国に依存している早期警戒衛星(SEW)を自ら保有し、北朝鮮の発射基地を攻撃できるシステム(巡航ミサイルスタンドオフの空対地長距離ミサイルなど)を装備することである。

 第3は、北朝鮮に対する国連制裁を一層厳格にして、一切のモノ・カネ・人・船舶の交流や融通を制限し、制裁のすり抜けを防止することだ。特に、中国には制裁厳守を約束させ、その履行を検証できるシステムをつくる必要がある。これにより、北朝鮮の核・ミサイル開発計画の資金を相当に制約させることができるだろう。

 第4は、それでも近い将来、半島の危機事態が起こるかもしれず、その際、半島統一と北東アジア全体の安定を図るため関係国による非公式協議の枠組みを構築しておくべきである。

 日米および米韓は同盟国であり、半島情勢に関する共同作戦計画があるが、できれば日米韓の3カ国の共同防衛ガイドラインを策定しておくことも必要となろう。

 (拓殖大学総長・森本敏 もりもとさとし)

 http://www.sankei.com/column/news/170313/clm1703130006-n1.html