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意識レベルの低さよ。(-_-;)

土曜日にピティナ指導者育成委員会主催の指導実技デモンストレーションという公開レッスン形式のセミナーがあった。

実力派の先生方が初級、中級、上級とそれぞれ数人ずつモデル生を10分〜15分のレッスンをして、見ている先生方が学ぶという主旨の催しだ。

この時期なので、モデル生徒たちはコンペティションの課題曲を1曲弾いて講師のレッスンを受けたのだった。

その中にマキリ生のツリメくん(中2)とスカッシュくん(小5)がモデル生徒として出演したのだった。

初級から皆さん、この時期としてはきちんと仕上げて予選はクリアーできる程度の演奏をしていて、さすがだ!と会場に集まった先生方も感心していた。

マキリは特に角野美智子先生のスピード感の有る適格で無駄の無いレッスンに感動した。

平間百合子先生も先生独自の味を生かした個性的なレッスンで、フランスの音楽を上手に指導していらして「ベテランだなぁ」と感心した。

かつてマキリとマキリ生もご一緒にパリの演奏旅行に行ったこともある平間先生はパリが第二のふるさとと言えるくらい頻繁にパリを訪れていらっしゃるので、その香りを指導に活かされていた。マキリもパリの独特な香りはとても好きで、現地に行かないとなかなか感じ取れないものが有るよね…と思いながら講座を聞いていた。

丸子あかね先生はマキリは委員会でご一緒で、とても楽しい愉快な先生なのだが、太鼓を使ったユニークな工夫の有るレッスンをされて、これまた素晴らしいと思った。

そして、中級にツリメくん登場だ。

彼がぎこちなさの残る演奏をしたのだが、ここで初めてあの浜離宮朝日小ホールの条件の悪い環境で楽器がまともに鳴ったように思った。

やはり彼は持っている。

そして練習不足が自分でもわかっているのか?自信の無さと弾き込みの不足から体はガチガチに固まってクソ真面目な演奏をしたのだった。

音だけは魅力が有った。

弱音も「これで練習さえすれば、すばらしいピアニッシモになるのに…」とマキリは思いながら聴いていた。

ツリメくんを担当してくださった先生が九州の永野栄子先生だった。

マキリは永野先生とは面識が無く、ただ、あのすばらしい演奏を何年か前に入賞者コンサートで聴かせてくれた谷くんの指導者だということだけ知って、初めて舞台上の永野先生を拝見したのだった。

真っ赤なカーディガンが良く似合ってらして、ものすごく勢いの有る絶妙なリズム感を持ってらっしゃる先生だった。

レッスンが始まると…

ガチガチに緊張した真面目顔のツリメくんと、漫才のように愉快で回転の早い永野先生のコンビが対照的で何とも言えない味が出ていた。

会衆もあまりの愉快さにゲラゲラ笑いながらレッスンは進んで行った。

永野先生の求めるものは…その一歩先のものだった。

「ただ模範的に弾いたって、おもしろくないじゃん!」のノリ。(笑)

マキリは三月初めの本部主催の課題曲説明会で菊地祐介先生がこの『ブコリキ』という近現代の曲を演奏された時に、その音色の美しさと絶妙な軽さ、リズム感の良さ、おしゃれな感覚、ピアニズムにおおいに感動したのだった。

でも、今回の永野先生の指導もそれに負けないくらいの魅力が有った。

(--) 「うううん、深いなぁ。マキリは無意識にツリメくんのレベルに合わせてレッスンしてしまっていた。」と思った。

この曲、そんなに簡単な曲ではないよね。

本気で弾いたら。

永野先生に引っ張られて、あのガチガチのツリメくんも必死で指を動かしてゆくうちに演奏がすっかり変わった。

これこそ指導者に求められるものだ。

生徒が変わらなくてはいけないのだ。

たったの12分のレッスンで、何かを与えなければいけないのだ。

マキリはすっかり永野先生のファンになってしまった。

講座を終えてからツリメくんと一緒に永野先生とお話ししたのだった。

永野先生は「男の子は良いわよね。やっぱり我々女性は指導のほうよ。

演奏は男性が良いわ。」とおっしゃった。

マキリもそう思う。ピアノは男性が弾くと楽器が無理なく鳴る。

男性の脳で演奏すると演奏が知的かつ立体的になる。

アルゲリッチなどの例外を除いて、やはり男性ピアニストには魅力が有る。

そして永野先生はツリメくんに「演奏は挑戦よ。安全運転ではだめ。ギリギリのところでチャレンジしなければ!」と言ってくださった。

「男の子は集中力が有るから、がんばって!」とも。

そして、それが土曜日のこと。

昨日の月曜日にツリメくんはマキリのレッスンにやってきた。

あの良いレッスンの刺激でさぞかし変わってきたか?!とマキリは期待していた。

なのに…

ツリメくんが弾くと…また元のもくあみだった。

(--) 「ええええッ…なに、それ!」とマキリは言った。

せっかくあんなに良いレッスンを受けたのに。

昨日はさぞかしやる気が出て練習しただろうと思ったのに、他の曲もまるで暗譜もできていなかった。

普段はもう練習しないツリメくんに文句を言うのに疲れ切っているマキリは文句も言わなくなっていたが、さすがにあのレッスンの後だったから、マキリも次々と不満を口にした。

「やる気無いの?ならもう付き合わないよ。アホらしい。」「練習してないよね?だからガチガチなんだよね。弾けば指はほぐれるし。」「今年が最後のD級なんだから、ここで練習することを身につけないと先は無いってわかってるでしょ?」「レジャーでやりたいなら、コンペなんて受けないでよ。コンペは戦いだよ。武具を身に着けずに戦いに出るか?いいかげんにしろ!」などなど…

ツリメくんは黙っていたが、そのうちに眼鏡を外してあふれてくる涙をハンカチでぬぐった。

(--) 「知るか!」

「素直な良い子なんだよね、なんでそんなに練習が我慢できないのかな?」とマキリは思った。

土曜日の公開レッスンの後で、ツリメくん母(教授)から「本当に貴重な体験をさせていただいてありがとうございます。ツリメが練習しないのは…私の責任だと反省しております。」と言っていた。

教授は自分の仕事で忙しくて、小学生時代にツリメくんにピアノの練習習慣をつけさせることができなかった。母親不在で男の子がまじめに毎日ピアノに向かうわけがない。

でも、もうツリメくんも中学生。今は親に言われてやる年齢ではなくなった。

彼自身の自覚にかかっているのだ。

涙をぬぐっていたツリメくんがガラガラの声で言った。

「…自分では…練習しているつもりだった…」と。

(--) 「ええっ?昨日何時間弾いたよ?」とマキリは聞いた。

「…2時間…」とツリメくん。

(--) 「五曲で2時間?日曜日に。」

それってさぁ、参加することに意義が有る的コンペ参加者のレベルじゃん。

(--) 「あのね、ピーチちゃんが練習がつらいからって一時期ピアノを辞めたのも、彼女だってD級で銀賞とった時には日曜日は一日中マキリ宅や自宅で練習したんだよ。

U介くんがE級銀賞をとった時だって、彼は朝の9時から夜の8時半まで、途中で30分昼食をとるだけで、あとは練習の音はやまなかったよ。

スミヨシだってそうだ。決勝の前は朝から晩までここで練習して、帰る時に「あ〜、ピアノって楽しい〜!」と言いながら玄関を出て行ったよ。

アキくんだってそうだ。日曜日は朝から晩まで練習したよ。

だから普段は野球少年なのにD級決勝で4位(同点3位で銅賞はのがしたけれど。)になれたんだよ。

どこに努力しないでいい思いをしている人がいるか!」とマキリは言った。

要するに、ツリメくんとしては昨日2時間練習したのが奇跡的に練習量が多かったわけだ。

(--) ええええええええ…。

マキリは絶句した。

意識レベルが違いすぎる。

ってゆーか、彼はそういう勉強の仕方でも一流校に入ったわけだね。

だから、努力ということを知らない。

(--) あああ、なんかねぇ…

いやだね〜。

やっぱり幼少期の親のしつけか。

マキリは別にコンクールとかで活躍したりしなかったけれど、親はいつも「物事はそんなに甘くはない。みんな死に物狂いで練習しているんだ。」とは言われていたから、そういうのが当たり前だと思っていた。

親の認識の甘さが…彼の持ち物を活かすのを疎外しているな。

昨日泣いて、彼が少しは変わるのか?それともケロッとしてまた「風邪ひいて…」とか「部活で忙しくて…」などと言い訳で逃げるのか?

そのへんはもうマキリは彼に任せる。

これ以上は無理だよ。

本人の認識力と忍耐力と高みを目指す闘魂が有るか?にかかっているからね。