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『密室の戦争』感想

ラストの方、稲垣氏の苦悩に涙した。

情報というものが大勢の流れに対してどれほど悍ましい力を持っているか、私は毎日みている。苦悩しか無い。いつも、毎時というより毎分、そういうことを考え続けてる。大衆行動が逆説的に作り出す動きというものは、ハッキリとした定型的反復性があり、独立意思を持っていてなお人はそこに巻き込まれるか、自ら飛び込んでいく。そういう原理がどんな時代も普遍的に繰り返されてきた。それは現代において時々刻々と移ろう秒単位の世界においてなお全く本質は変わらない。そんなことを本当に毎分のように考えて7年くらい経った。

そんな自分がもしこうした捕虜の立場だったらどう答えるんだろうかと深々と考えながら見たこのドキュメンタリー、終盤、本当に大粒の涙が出た。

彼が捕虜という立場をもって敵国に加担し、結果から言って戦時期間を短くできることに貢献できたかもしれないと評価できる一方で、彼の仕事が同胞の命を奪った面は無視できるものではない。されど彼はそれを選び、自決を選ばず、苦悩し決断した。そして、彼が関わったビラで、捕虜になることを禁じた我が日本軍から4,000人の投降者を得たというのは、彼の決断になんらかの意味や救いがあったとも言える。そういう面もまた無視できない。

人の魂は、かくも辛辣な苦悩に晒される。願わくばそれに重大な意義があることを願ってやまない。