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トミヤ楽器

ぼくはいつもポケットにピックを入れている。

どこで三味線やギターを弾く状況に陥っても弾けるように。

って、人前で弾くような腕じゃないので、

言わばポケットに手を突っ込んだ時の手すさび、

昔の紳士たちがクルミを入れてたみたいなもんだね。

ところがこのピックを、

やたらに落としてなくす。

先日もなくした。

部屋の楽器たちに差してあるピックも数少なくなってきたし、

ストックを買っておこうか。

ところが近頃、

楽器屋さんって少なくなってない?

昔はもっといっぱいあった気がするんだけど。

天王寺公園(てんしば)の近く、

ラブホ街の入り口に、

古い古い楽器屋さんがある。

ぼくが高校生のとき、

初めてギターを買ったのもここだったし、

その後も高いギター、

バンジョーも2丁買ったよな。

久々に訪れてみた。

昔のままの小さな店舗にシャッターが降りている。

あぁ、さすがに閉店しちゃったのかなと思ったら、

ぼくは10時半ごろ行ったんだけど11時開店だった。

遅いな。

老夫婦がやってはるからかな?

時間をを潰して11時になってから入店した。

雑然とした店内には、

懐かしい匂いがする。

昔は活気があってよかったけど、

今はそれとは別の意味で素敵なしっとり感がある。

硬めのピックを3枚買って、

少しおしゃべり。

バンジョーの皮って張り替えてもらえますか?

「そんなの自分でやったらいいよ」

できますか?

「できるできる。失敗したらもっておいで」

ぼくみたいなレベルの低い初心者が来る店じゃないんだけど、

オーナーも奥さんも音楽が大好きなんだ。

きっとかなり詳しくもあるのだと思う。

何かで表彰たりはしないけど、

きっと知る人ぞ知る大御所なのだと思う。

でも、素人にもプロにも分け隔てはない。

「がんばってみて。 

 バンジョーの皮はいくらでもあるからね」

そう声をかけれながら、店を出た。

こんな風にあったかい楽器店はきっと絶滅寸前だし、

多分もう儲けなんてどっちでもよくて、

ただ音楽の好きな人が来ることだけを待ち受けているのだろうな。

ぼくはまた来ますね。

この店がつぶれるまで通うだろうと思う。

古い古いこの店にこそ、

音楽がの心が脈々と息づいていると思うから。

この店が音楽そのものだと思うから。