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Vol.1328「NAGASAKI OF THE DEAD Vol.7」

「NAGASAKI OF THE DEAD 第7話」

フライパンを手にとった僕は、辺りを見回した。

まだゾンビは近くにはいないようだ。

僕はポケットからスマホを取り出した。

画面の明かりで周囲を少し照らす。

「あった」呟くと、ポケットをスマホに入れる。

急に煙草を吸いたくなったなったが無事にここを出てからだ。

腰を低くしてお目当ての「モノ」が並んでいるであろう棚に向かう。

「マジかよ・・・」

お目当てのモノはもちろん「包丁」だ。

目の前に包丁は確かにあった。

しかし、ガラスケースに入っていて鍵がかかっている。

安全面での配慮だろうか。

手に持ったフライパンを眺める。

これで割ってみるか。しかし、強力な武器を手に入れる代わりに音に反応したゾンビがこちらに

向かってくるかもしれない。

そもそも、この長崎に出現したゾンビが音に反応するかもわからないが。

「でも、たぶん、そうだよな。弱点も脳だろ。どうせ」

勇気づける為に、声に出してみる。

僕はフライパンを両手で握って振り上げた。

多少のリスクはあっても武器のアップグレードは必要だ。

「ぎゃあああああ」

ガラスを割ろうとしたその時だった。

少し遠くで叫び声その方向を見る。

非常口の案内の明かりでかろうじて見えたが警備員の恰好をした男がゾンビから逃げていた。

いったいどこへ逃げようとしてるか?

僕は彼を目で追った。

「そうか。駐車場だ」

ここは4階、すぐ隣りの駐車場と5メートル程の短い渡り廊下で繋がっているはずだ。

しかも、逃げているのは警備員。外に出る為の鍵を持っているはず。

僕は彼を追いかけることにした、武器は後でなんとかなるだろう。

走ろうとした瞬間、一体のゾンビがこちらに近づいてくるのが見えた。

警備員を追うゾンビの動線から外れたヤツらしい。

僕は迷わずフライパンを再び振り上げて、思いっきりガラスケースに向けて振り下ろした。

が、ガラスケースは割れない。

僕は焦って何度かフライパンを叩きつけたが、わずかにヒビが入った程度だった。

映画だったら簡単に割れるはずなのに。実際ゾンビはさっき簡単にガラスを破っていたのに。

この映画はどうやらゾンビを贔屓にしているらしい。

そうこうしてるうちにゾンビは近づいてきている。

「くっそ」

ここはフライパンで応戦するしかない。

ふいにガラスケースの横に目を向けると、僕は驚いた。

普通に包丁が置いてあったのだ。パッケージされてるものがラックにぶら下がっていた。

ガラスケースに目が行ってしまい気がつかなかったのだ。こんな簡単に手に入るとは。

ゾンビが僕をロックオンしたのを肌で感じ、いや、明らかにこちらを見て両手を地面に水平に

上げて向かってきた。

そういや、キョンシーも両手を挙げてたな。まあ、あれもゾンビか。

そんなことを思いながら、僕は思い切りフライパンをゾンビに投げつける。

フライパンはゾンビの顔に直撃した。

ひるんだゾンビをしりめに包丁を手に取りゾンビとは反対側に走りだした。

すぐさま棚のそばに隠れるとパッケージをはがす。しっかりと包丁を両手で握りしめる。

「うう、うう」

ゾンビの呻き声と足音。そこではたと思う。

何も戦う必要はない、とにかく逃げ切ればいい。武器の調達イコール戦闘という考えに

なってた自分を半ば呪う。

僕はゾンビが歩いてくる方の列とは反対側に飛び出した。

が、そこにもゾンビがいた。

気が付くと東急ハンズのフロア全体あちこちにゾンビが点在している。

おいおい。

果たして無事にここから出られるのだろうか。

僕は一体目のゾンビに向かっていった。